ワイヤーママ2019年5月号にコラムが掲載されました。
前回までで一通り、乳幼児期から、学童期前半のお子さんに注意したい咬み合わせについてお話してきました。
この時期以降、乳歯がすべて永久歯に萌え変わるまでに注意したい咬み合わせは、「上顎前突(出っ歯)」です。上顎前突は骨格的な問題で生じる場合もありますが、長く指しゃぶりをしている等、異常な外力が長期間加わったことが原因で生じることが多いです。
上顎前突は、他の不正咬合と違い、習癖が原因である場合、原因となる習癖を取り除かないことには治療が上手くいきません。そして頑固な指しゃぶりをやめさせることはとても難しいです。一般的に3歳くらいまでは見守って、3歳過ぎるとやめるようにしていきましょうと言われています。3歳すぎると、子どもも「指しゃぶりは良くないこと」ということが理解できるようになってきます。そこで上手くやめられたら良いのですが、つい無意識に…ということがあります。指しゃぶりはその子の精神安定剤のようなもので、そうすることで気持ちの安定を保っていることも多いので、「だめでしょう!」と躍起になって注意すると、その子の気持ちの行き場がなくなってしまいます。したがって、指しゃぶりをしている子どもをまず受け入れ、していることを注意するのではなく、していない時に褒め、しそうな時は違う方向へ興味を持っていってあげるということを繰り返してあげると上手くいくことが多いです。
もちろん、骨格的なことが原因の場合や、早期に習癖を取り除くことができた場合は、もう少し早く治療に取り掛かれますが、この時期でも十分回復は可能ですし、また、この時期であれば習癖はなくなっていることがほとんどです。したがって、あせらず見守ってもらえたらと思います。